「専門用語を使わずに分かるように説明して」と言われて困った経験はありませんか?たとえ話の作り方を体系化すれば、難しい概念を一発で伝えられるようになります。アナロジー思考の実践版を解説します。

たとえ話とは

たとえ話(analogy)は、伝えたい概念を、聞き手が既に知っている別のものに重ねて説明する技法。アナロジー思考の代表的なアウトプット形式です。

ポイントは、「相手が確実に知っているもの」「構造的に同じ」の2条件を満たすこと。これを外すと、たとえ話は逆に分かりづらくなります。

作り方の4ステップ

ステップ1:伝えたい概念の「構造」を抜き出す

主体、対象、関係性、目的——これを書き出す。

ステップ2:聞き手の知識領域を想像する

相手は何に詳しいか?どんな趣味・職業・経験があるか?

ステップ3:似た構造を持つものを探す

ステップ1の構造と同じものを、相手の知識領域から見つける。

ステップ4:両者を1文で重ねる

「○○は△△のようなものです」とつなぐ。

概念:API

構造:アプリ(要求側)が、サーバー(提供側)に処理を頼んで結果を受け取る たとえ:「APIは、レストランのウェイターのようなもの。お客(アプリ)が注文(リクエスト)すると、厨房(サーバー)に伝えて、料理(データ)を運んでくる」

概念:キャッシュメモリ

構造:頻繁に使うものを近くに置いて取り出しを速くする たとえ:「キャッシュは、机の上にいつも使う本を置いておくようなもの。本棚(メモリ)まで歩かなくて済む」

概念:複利

構造:時間とともに加速度的に増える たとえ:「複利は、雪だるまを転がすようなもの。最初は小さくても、転がすほど雪がついて大きくなる」

ビジネスでの応用

用途1:技術を非エンジニアに説明

専門用語を使わず、生活の事象でたとえる。

用途2:戦略を経営層にプレゼン

複雑な戦略を「サッカーで言うとカウンター攻撃」のように1文で伝える。

用途3:新人教育

業務プロセスを身近な事象でたとえると、新人の理解が3倍速くなる。

よくある失敗

失敗1:相手が知らないものでたとえる

プログラマーじゃない人に「Reactのようなもの」と言っても伝わらない。確実に知っているものを選ぶ。

失敗2:構造が違う

「形が似てる」だけで構造が違うと、誤解を生む。主体・対象・関係性が一致するか確認。

失敗3:たとえに引きずられる

「サッカーのカウンター」とたとえた瞬間、本来の戦略がサッカーに寄っていく。たとえはあくまで補助

鍛え方

身近な事象を毎日1個、別の事象にたとえる練習。「会社の組織図はピラミッド」のように。3つの異なるたとえを1つの概念に対して作れたら上級者です。

異分野の本を読むと、自然と引き出しが増えます。「医療の世界では」「将棋の世界では」と切り出せる人は、たとえ話が上手い人です。

まとめ

たとえ話は、アナロジー思考のアウトプット形式の代表。要点:

  • 「相手が知っている」「構造が同じ」の2条件
  • 主体・対象・関係性まで揃える
  • たとえに引きずられない
  • 1つの概念に3つのたとえを作れたら上級者

→ アナロジー思考全体の体系はアナロジー思考(類推力)とは?難しいことを「たとえ話」で伝える力もあわせてどうぞ。